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編集委員:盛山和夫・原 純輔・白波瀬佐和子
A5判・上製・各平均500頁
●各本体4,800円+税 2008年1〜3月刊
<特色>
- 1945年から2000年までの半世紀に発表された「階層」「格差」「不平等」などに関する主要論考78点を集成した、はじめての本格的リーディングスシリーズ!
- 戦後の階層研究を日本社会の変遷と照らし合わせながら追えるよう、時代を1945-1970/1971-1985/1986-2000の3つに分類し構成!
- 時代背景と研究動向を描き出す「序論」、収録論文の今日的役割と位置づけを浮き彫りにする「Part解説」を収録することにより、戦後
日本の実証的な取り組みを分かりやすく解説!
- 第1巻には1945年から2000年までの関連論文約600本をまとめた「主要論文一覧」を収録。第2巻、第3巻には各年代の「主要論文一覧」を収録。
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第1巻 変動する階層構造 1945-1970
盛山和夫[編著]
身分階層制や階級意識が問われた終戦直後から、高度経済成長によって、日本社会そのものが大きな変動を迎えた時代。産業構造のダイナミックな変化、劇的な生活水準の向上、教育機会の拡大などとともに、「中間階級」や「学歴社会」が新たな問題関心として登場する。(主要論考24篇収録)
2008年1月刊 ISBN978-4-284-30211-1 |
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第2巻 広がる中流意識 1971-1985
原 純輔[編著]
大学紛争の傷跡と73年のオイルショックの余波によって、学歴の意味が問われ、環境問題や女性差別などが、新たな問題として提起されてきた時代。豊かさの中で人々の格差に対する関心は薄らぎ、「一億総中流」が自明視されていった。(主要論考27篇収録)
2008年3月刊 ISBN978-4-284-30212-8 |
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第3巻 ゆれる平等神話 1986-2000
白波瀬佐和子[編著]
プラザ合意による円高でバルブ経済が膨張したのも束の間、その崩壊によって長期にわたる不況が続き平等神話への疑いが醸成されていった時代。この時期の終わりに「格差」「不平等」への関心が急速に高まり、ジャーナリズムを巻き込んだ論争へと発展していく。(主要論考27篇収録)
2008年2月刊 ISBN978-4-284-30213-5 |
<刊行にあたって> 盛山和夫・原純輔・白波瀬佐和子
かつて、日本は平等社会だと信じられていた時代があった。正確には、「信じようとした」時代だというべきだろう。その時、研究者であれ、出版・マスコミ関係者、あるいは政治家であれ、何年か後には「格差社会」が人びとにとって最大の関心事の一つになろうとは誰も予想していなかったに違いない。
「格差と不平等」や「階級と階層」についての世間のイメージや人びとの関心は、時代の風潮とともにさまざまに揺れ動いていく。それはしかたのないことだ。ただ、学問の世界では、貧困、社会的不平等、あるいは階級格差と対立の問題は、一貫して重要な研究テーマであり続けてきたのである。
今よりもっと激しい格差と貧困の中から出発した戦後日本社会では、その問題を解明することが学術研究の大きな課題であった。しかし戦後復興を経て高度経済成長期に入ると、サラリーマン階層や学歴社会の問題へと関心が移る。そして1970年代以降の豊かさの中で、マスコミを中心に「一億中流意識」が謳われ、しだいに「平等神話」が形成されていった。それが、1990年代からの不況により、再び「格差」が問題となったのだといえる。
本リーディングスは、こうした戦後日本社会における格差と不平等に関わる社会変化を証言する意味をもっている。むろん、本リーディングスが第一義的にめざしているのは、格差と不平等に関する学問の継承と発展に寄与することである。先行する研究の問いと成果を踏まえることなしには、学問の進歩はありえない。世の中での「格差」への著しい関心の高まりが見られる今日、研究の地道な足跡を見つめ直すことも大切であろう。
本リーディングスがそうした研究の大海への道標となれば幸いである。
<推薦します>
●“格差と不平等”に期待する 橘木俊詔(同志社大学教授)
一昔前は一億総中流社会と言われた日本であったが、貧富の格差拡大や階層の固定化が主張されるようになった。日本は平等社会であるとの通念が強かったが、それはもう消滅しており、もう格差社会に入ったという論調がある。
本シリーズで収録された諸論文は、戦後の混乱期から高度成長期、オイルショック後の安定成長期、そしてバブル期後の大不況期において、格差や不平等の問題がどのように変遷してきたかを巡って、代表的な論稿を集めたものなので、戦後の歴史を鳥瞰するのに非常に役立つ試みである。具体的には、戦後から1970年までの変動期、71年から85年までの平等性が高い時期、86年から2000年までの平等崩壊期、の3時期にうまく区分されている。
大半が社会学関連の文献なので、教育、職業、家族といった観点から、格差や不平等の問題を探求したシリーズである。格差、不平等はこれらの観点から直接評価できるので、日本の教育、職業、家族がどのような役割を演じてきたかを知る上でも有意義なシリーズである。
格差、不平等の問題には価値判断の必要なことがあるし、経済学的な分析も欠かせない。本シリーズをさきがけとして、哲学・倫理学や社会保障を含めた経済学のシリーズへの期待も高まる。
●過去に現在を、現在に過去を読む 竹内 洋(関西大学教授)
一九五〇年代、わたしは佐渡島の中学生だった。三人の幼子をかかえた近所の女性がよくわが家に米を、それも一升、二升の単位で借りに来ていた。夫の漁師を海難事故でなくしたからである。といっても彼女はお情けにすがって生きていたわけではない。職安斡旋の日雇い肉体労働にも励んでいた。だが食べ盛りの男の子どもが三人もいれば、彼女の働きだけではどうにもならなかった。一方では、近所の旅館兼料亭からは、毎晩のように嬌声が聞こえた。「格差」どころか「搾取」や「階級」が生活実感をともなった言葉だった。
このような時代においては、学生運動が活発であり、社会学者をふくめて日本の社会科学者は、貧困と不平等問題を丹念においかけていた。だが、世界史にもまれにみる高度成長時代がやってきて、一億総中流化といわれるようになる。バブル経済時代もやってきた。こんななかでも心ある社会学者は総中流化の実態について、地道な研究を重ねてきた。格差や不平等問題は、いまにいたってことあらためて研究されたわけではない。戦後の研究史の中で洗いなおすことが必要である。「現在の出来事を眺めることが過去の出来事の理解を容易にし、過去の出来事のなかへ沈潜することが現在起こっていることを明らかにする」(ノルベルト・エリアス)からである。本シリーズはそのための絶好なリーディングスである。
●平等社会神話の形成と崩壊を実証的にあとづける試み 今田高俊(東京工業大学教授)
格差と不平等は社会秩序の形成と維持にとっての根幹をなす。著しい不平等の存在は国民の不満を高め、政治を不安定化する要因となるからである。おそらく、不平等が完全に廃止された社会など、だれも本気にしてはいない。けれども、人びとは不平等が不公正な方法によって生じていることには耐えられない。その場合には、しばしば反乱、暴動、意義申し立てなどによって、政治を不安定化させ、格差や不平等の撤廃運動が展開される。だからこそ、不平等問題は国家統治の主要テーマに掲げられてきた。
本シリーズは、この問題に関する戦後日本の実証的な取り組みを、アンソロジー形式で明らかにする試みである。戦前の政治経済を完膚なきまでに叩きのめされた日本は、十年という短期間で曲がりなりにも民主化と経済復興を遂げた。その後、世界に類を見ないスピードで近代化を成し遂げたことは、世界から奇跡として位置づけられた。しかし、その頃から既に格差と不平等の拡大が水面下で進行していた。バブル経済に舞い上がって、その対応を怠り、1990年代以降の市場競争と自己責任を標榜する新自由主義の嵐によって、平等社会日本の神話が崩壊した。戦後復興、高度成長と総中流社会の実現、格差化と不平等社会日本への道のりを、データに基づいて実証的に明らかにする本シリーズは、表層的で感情的ジャーナリズムの議論に陥りがちなテーマを冷静沈着に考察する上で不可欠の資料である。 |
平和人物大事典 |
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