田村泰次郎選集
編集:秦昌弘/尾西康充
全5巻・A5判・上製・各巻平均350ページ
揃本体:30,000円+税 各巻本体6,000円+税
ISBN 4-8205-9888-0 NDC 918.68
2005年4月刊


<特色>

●戦前戦後にかけて執筆された小説・評論102編を精選し、ジャンル別・発表年代順に配列した。
重要参考資料として、単行本未収録の「をろち」をはじめ、後年追加発表された「肉体の門 第二部」なども収録。
●底本は原則として初版単行本ないしは初出紙誌を用いた。漢字は新字体に改め、仮名遣いや送り仮名、句読点は底本通りとした。
●各巻末に「解題」「校異」、第5巻巻末に「解説」「著者一覧」「参考文献目録」「年譜」を付した。

<各巻構成>
第1巻
Marcus Aureliusとの対談
挑戦
成長記
文学
形態
病気
光る埋葬
選手

日月潭工事
恋愛

暗雲の下
昭和絵巻
いきもの

滝の女
春の話
夢殿
廃弾
蟹料理
少女
太宗寺横丁

をろち*
大学*

第2巻

強い男
新京挿話
白蘭花
北京特急
銃について
応召前後
集団生活の一面
輸送船にいて
肉体の悪魔
渇く日日
女しゃべる
沖縄に死す
春婦伝
大行山の絵

故国へ
現代詩
雁帰る
青鬼
ある死
途上
第五図 破壊された女*
「春女伝」に関するGHQ検閲資料*

第3巻
「街の天使」系譜
肉体の門
崩れた街にて
女狩りの夜
群盗哄笑

鳩の街草話
入道雲

獣の日
女体男体
朝顔
刺青
象が通る夜
肉体の門 第二部*
田村泰次郎氏のプロフィール*

第4巻
黄土の人
裸女のいる隊列
餃子時代
鐘の音
重い車輪
肌の孤独
ある香港人
群馬調教
隠沼
男鹿
暗い渇き

地雷原
密猟者
失われた男

第5巻
「意識の流れ」統整論
T・Sエリオットの新転向
仏蘭西の新しい雑誌
精神分析小説の危機
神話主義の面貌及その方法論
ステファン・プリアセル『露西亜演劇の生命』
革命意思としてのロオトレアモニスムに就いて
ジョイスの対象と方法
活動的言語と現実
小説の血路と神話主義的思考
反価値の価値
新ロマン論
新しい人間の姿勢−中河興一氏著《海路歴程》
スタイルに就いて−私の手帖より
今日のロマン論の意義
ダ・ヴィンチ雑感
横光利一氏の一面
今日のモラルの問題
リアリズムの二つの型
新人奮起の時
どんな批評家が必要か
純文学の弱点
現代文学の要望と方法について
人間性と歴史的意義
新文学の二つの花
ヒマラヤ登り
文章とモラル
緊迫した感情
中河興一の文章
春山行夫の批評について
私小説とリアリズムの遊離
現代文学に関連して
人間性の意慾的展開
文学と俗物性の問題
再び俗物性の問題
悪魔の観念について
中河興一氏について
今日の感想
「照れぬ文学」について
肉体が人間である
肉体解放論
肉体文学の方向
戦場と私



戦後研究に不可欠の資料 ― 紅野謙介(日本大学教授)


なぜ、戦後日本は植民地の体験や侵略戦争の体験をとらえそこねたのか、文学はそのときどのような制約となり、どのような突破力をもたらしたのか、こうした問いはまだ答えを得ていない。敗戦から半世紀以上をへて、なおその歴史的条件に規定されているわたしたちにとって「戦後」研究は未完のままになっている。占領期や植民地文学の研究が進むなか、田村泰次郎のような作家は戦後のメディア史や言説空間を考える上でも絶好のサンプルである。主要テキストのしっかりとした提供に期待したい。

 

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