1 |
森鴎外
田中実編・解説
ISBN4-8205-8158-9
日本における自然主義文学論の嚆矢「医学の説より出でたる小説論」(明治22年)ほか文学関係のエッセイ、医学に因む諸篇および講演を配した三部構成によって自然科学と文学の二律背反を生きた森鴎外の知的模索の諸相をとらえる。
◎全50篇収録 |
2 |
樋口一葉
松坂俊夫編・解説
ISBN4-8205-8159-7
伝統文学に擬した素朴なエクリチュールから出発した一葉が、遂に近代における“窮極の文語体”による「たけくらべ」を描くまでの過程を、「若葉かけ」から「みつの上日記」(明治24〜29年)にいたる日記および随筆・書簡を配して据えなおす。
◎全43篇・書簡37通収録 |
3 |
泉鏡花
松村友視編・解説
ISBN4-8205-8160-0
記憶の向こう側の世界を、テクストとして紡ぐことに憑かれた鏡花は、実生活においては奇癖をもって知られたが、その昇華の所産は“認識のドラマ”(編者)としての「草あやめ」ほかのエッセイに見ることができる。他に談話筆記を併収。
◎全82篇収録 年表 吉田昌志 |
4 |
島崎藤村
藪禎子編・解説
ISBN4-8205-8161-9
「詩から散文へ」。小諸在住の六年は、「千曲川のスケッチ」あるいは絶唱「千曲川旅情のうた」をうみ、「破戒」の想を得るが、自らを「遊子」(李白)になぞらえ、衿恃とその陥穽に屈折した覊旅の終焉を迎えるまでの旅のしおり114篇。
◎全114篇収録 |
5 |
夏目漱石
小森陽一編・解説
ISBN4-8205-8162-7
生涯「なぜ自分はここにいてあそこにいないか」を問い続けた(柄谷行人)漱石のアイデンティティ模索のあとを、「倫敦消息」「硝子戸の中」などの諸篇によって探るとき、漱石と「同一の経過」をその生いたちから辿ることになるだろう。
◎全23篇収録 |
6 |
谷崎潤一郎
千葉俊二編・解説
ISBN4-8205-8163-5
「浮雲翳白日」(孔融)、すなわち谷崎潤一郎の文学は「光」によって生まれる「翳」の文学に到達するが、なお描き切れない「あわい」の色は、「芸について」「陰翳礼讃」ほか、エッセイと呼ばれる文体の獲得によってはじめて描き得たといえよう。
◎全15篇収録 |
7 |
石川啄木
上田博編・解説
ISBN4-8205-8164-3
啄木鳥の誕生―啄木の名は夙く「下学集」に見えるが、近代に至って遂に詩人啄木を誕む。啄木が終日糧を求めて樹の幹を嚆くときリズムが生まれ、傷痕は刻印された詩であった。一方、エッセイは嘴で樹の幹を打つ行為そのものか。
◎全79篇収録 |
8 |
宮澤賢治
大塚常樹編・解説
ISBN4-8205-8165-1
賢治がドーバー海峡に擬したいわゆる「イギリス海岸」は第三紀層であり、「本歌」である前者は中生代の白亜紀層だという。これは、限定された現実から無限をイメージする真の詩人の発想であるが、一方のエッセイでは地質そのものを問う。
◎全37篇・書簡57通収録 |
9 |
川端康成
小笠原克編・解説
ISBN4-8205-8166-X
たとえ私事に即したエッセイ等においても、なお康成の人生観照の眼は透徹した冴えを見せる。たとえば「僕の浅草地図」はまぎれもなく“一人称の地誌”であり、数多くの弔辞は、此岸に残る者が自らの死を準備するための措辞であった。
◎全44篇収録 |
10 |
太宰治
鳥居邦朗編・解説
ISBN4-8205-8167-8
「生まれてすみません」「選ばれた者の恍惚と不安」という相反する措辞の擬態は、私信やエッセイ等では一層顕著となり、ここでは事実か虚構かといった常套的分析を拒否する周到な詐術と真実が拮抗し、撥ねつるべの支点は容易に定めがたい。
◎全36篇収録 |